「ずっと使える」究極のベーシック。
NIKKO の「純白」ボーンチャイナが愛される理由

手に取ったときの心地よさと、置いたときの美しさ。その両方を叶える、KANADEMONO のテーブルウェアコレクション。
今回は100年以上の歴史をもち、ボーンチャイナをはじめとする食器を通じて、多種多様な食のシーンを彩る、ニッコー株式会社にお話しを伺いました。
「純白」にこだわった NIKKO のボーンチャイナ

ボーンチャイナとは、19世紀初頭にロンドンで産まれた磁器の一種。ヨーロッパではカオリンという原料を用いた白い食器がすでにありましたが、ロンドンではカオリンが採取できず、代わりにボーンアッシュ(牛の骨灰)を使うことで、白さを表現したことがはじまりです。
NIKKO は、1908年に前身である「日本硬質陶器株式会社」を創業。1978年よりファインボーンチャイナの生産を開始しました。
世界中で愛される NIKKO のボーンチャイナ

NIKKO のボーンチャイナの最大の特徴は、その「白さ」。ボーンアッシュの含有率を約50%まで高めることで、透き通るように美しく、食材が引き立つ「純白」の食器が誕生しました。日本の規格ではボーンアッシュの含有率が30%以上のものをボーンチャイナと呼ぶことができますが、その基準を大きく上回った数字。含有量が多いと形成するのが難しいとされていますが、研究を重ね、このような高度な技術を実現しました。
またレストランやホテル、ビュッフェなどのハードな環境にも耐えうる丈夫さも魅力です。現在では日本国内にとどまらず、世界中のトップシェフから支持を受け、確かな信頼と実績を築き上げています。
REMASTERED コレクションの魅力

今回 KANADEMONO でお取り扱いをするのは、「REMASTERED(リマスタード)」コレクション。
NIKKO のあまたあるアイテムの中からピックアップし、現代の暮らしに寄り添うよう、再編集(リマスタード)されたシリーズです。定番のプレートからはじまり、スタッキングボウルやスープボウル、タンブラーやスプーン、オーブン対応の REMASTERED FREEZER・OVEN* など、日常の食卓を彩る豊かなラインナップ。
アートディレクターの平林奈緒美さんがディレクションを担当。流行に左右されず、和洋中どれにでも合わせやすいミニマルなデザイン、長く使い続けられる普遍性と実用性が魅力です。 そんな当シリーズの誕生秘話やこだわりのポイントを NIKKO のご担当者さんに伺っていきます。
*REMASTERED FREEZER・OVEN の素材はパーセプションチャイナとなっており、ボーンチャイナではありません。
はじまりは一枚のプレートから
過去の商品をストックするサンプルルーム
─── 膨大なアーカイブの中から選んでいく過程は大変なものだったのではと想像するのですが、どのように進められたのですか?

「実は最初のきっかけとなる一枚がありまして、それがこちらの 16cm のラウンドプレートです。
こちらはバンケットウェア(ビュッフェなどで使われるもの)ではなく、元々中華の取り皿として作られたものでした。通常のプレートに比べ、リム(プレートのふちの部分)が狭いのが特徴です。その分イーティングスペース(プレートの中心部分)が広くとれるので、日本のコンパクトな住宅やテーブルにもマッチするのではと考えました。
このタイプのプレートは、海外のものだとぽってりとした厚みのものもよく見かけます。ただそれだと重かったり、しまうときに場所をとってしまうこともありますね。逆に薄すぎると緊張感が出て、日常使いとしてはハラハラしてしまいます。その中間の、厚すぎず薄すぎない絶妙なボリュームに調整されています。」
─── なるほど。取り皿としての特性が、現代の日本のライフスタイルに見事にフィットしたのですね。
REMASTERED のプレートはすべてリムが狭めにデザインされており、コンパクトなカフェテーブル、ローテーブルなどに合わせてもしっくりくる佇まい。
持ちやすいように立ち上がりがやや高めになっているのも特徴。汁気のあるものでも最後まですくうことができ、お子さんでも扱いやすいのだとか。

─── こちらのラウンドプレートを中心に、他のアイテムもセレクトしていったのですか?
「はい。当時のデザインのままのものもあれば、先ほどのプレートに寄せていく形でチューニングしていったものもあります。
ラウンドプレートと同じく人気のオーバルプレートは、試作段階でプロのシェフから意見をもらいました。ご家庭での使用はもちろん、プロ目線でも使いやすいデザインに仕上がっています。」
伝統のバックスタンプ

─── REMASTERED の特徴として、バックスタンプのデザインもとても魅力的ですね。スタンプが入る位置にバリエーションがあるのも、遊び心があって素敵です。
「2羽のフェニックスが向き合った、ダブルフェニックスのバックスタンプは、NIKKO のシンボルマークとして創業時から用いられています。こちらも REMASTERED のためにリデザインをし、あえて掠れたような、味わいのある質感になっているんですよ。」
ベーシックを極める、ずっと使える一枚
─── 数多くのアイテムを世に送り出している NIKKO さんですが、その中で REMASTERED コレクションはどのような位置付けでしょうか?

「キーワードとしては『ずっと使える・飽きない・普遍的』といったところでしょうか。色々気移りするかもしれないけど、ここに帰ってくるのではないかと思っています。」
─── KANADEMONO のどんなテーブルに馴染みそうですか?
「ベーシックなデザインなので、テーブルの素材は気にせず選んでいただけます。テーブルクロスなどのファブリックとも、とても相性がいいんですよ。
先ほどもお伝えしたとおり、コンパクトな空間とも相性がいいので、ファミリーから一人暮らしの方まで、幅広く使っていただけます。」
─── どんな色にも空間にも染まれる、究極のベーシックですね。ありがとうございました!

「白の食器」はどの家庭にも一つはあるアイテムではないかと思います。それだけに、何を基準にどう選んでいいのかわからない、そう悩んだ経験がある方もいるのではないでしょうか。
計算された実用性と耐久性をもつ REMASTERED はそんな迷いを解消し、暮らしに、さらには人生に寄り添う食器になると、お話を聞いて感じることができました。
そして、家具ブランドである KANADEMONO として重ねたいもうひとつの視点。それはわたしたちのテーブルは、料理を引き立てる器を、さらに引き立てる存在でありたいということ。料理、器、テーブルが調和することで、ひとつの美しい食卓が生まれると考えています。
お話を伺ったのは

今回お話を伺いに訪れたのは、NIKKO が運営する東京・富ヶ谷のジェネラルストア「LOST AND FOUND」。
店名は「忘れ物保管所」の意味があり、「物があふれる時代にあえて、大切に作られたのに埋もれてしまっている物に再び光を当て、世の中に打ち出す」という想いが込められています。
NIKKO のプロダクトがそうであるように、店内に並ぶのは、長く愛用できる日用品たち。懐かしさと新しさが同居する、わくわく感に溢れた空間でした。
NIKKO の食器がうまれる場所

そんな REMASTERED はどのようにして作られているのでしょうか。さらに深く知るために、石川県白山市の工場にもお邪魔しました。
型の試作から顔料作りまで、すべての工程がひとつの工場内で完結しているのが NIKKO の強みということで、広大な土地には複数の棟が並び、様々なセクションが連なっています。
案内していただきながら、一枚のお皿を作るのに実に多くの工程があることに驚きました。こちらではその一部をご紹介します。
NIKKO の食器ができるまで
最初に見せていただいたのは、フィルタープレスという機械。陶石や骨材などを混ぜた器の原料を圧搾・ろ過し、水分を抜いていきます。「酒粕を作る方法に似ています」とご担当者さん。
水分が抜けたあとは、坯土(はいど)と呼ばれる粘土のような状態に。この段階で丁寧に扱わないとのちのち悪影響が出るため、適切な湿度で、赤ちゃんのように大事に扱われているのだとか。
1日に約2500枚もの器を作り出すろくろマシーン。レストランやホテルなどの大量注文にも即座に対応できる、タフなオペレーションに舌を巻きます。
次の工程を待つ、乾燥中の REMASTERED のスープボウルたち。焼き上げる前から美しく、均整のとれた姿にうっとり。
施釉、転写、形成など、手作業の工程も多くあります。NIKKO の食器作りは、機械と手仕事のハイブリッドがポイント。リズミカルで無駄のない動きに、熟練の技を感じます。
約1250℃になる焼き窯。迫るような熱気に思わず息を飲みます。適切な温度は形状によって異なるため、商品開発の時点から温度を考慮しているのだとか。「炎の色でだいたいの温度がわかります」とご担当者さん。
REMASTERED のバックスタンプの銅版。こちらにインクを乗せてプリンティングしていきます。フェニックスは数百年に一度、火の中で転生し、永遠に生きるといわれる伝説上の生き物。窯で焼かれて生命を与えられる焼き物を重ね、シンボルとして選ばれたそうです。
こちらは検品中の様子。寸法通りに焼きあがっているか、黒点やピンホールがないか、非常に厳しくチェックされているのが印象的でした。高い水準をクリアした商品だけが、お客様の手元に届きます。

工場内でもひときわ目を引く、存在感のあるこちらの焼き窯。1963年に作られたもので、現在は使用されておらず、メモリアルキルンとなっているそう。東京の LOST AND FOUND の店舗内装でも、こちらをモチーフにしたアーチを見ることができます。
まさに NIKKO の歴史を物語る象徴的な存在。働く方々を見守るように、静かに鎮座している姿が印象的でした。
NIKKO のサステナビリティ

東京・石川と2ヶ所でお話を伺い、随所で感じられたのは、NIKKO のサステナビリティへの高い意識。最後にその取り組みの一例をご紹介します。
製造工程で出た、型からはみ出た素地や、検品ではじかれた食器たち。破棄されるのではなく再利用され、次のボーンチャイナ商品として生まれ変わります。
さらに、ボーンチャイナに含まれる「リン酸三カルシウム」に着目し、肥料にリサイクルした商品も。真っ白な肥料は、園芸用化粧砂としても美しく映えます。
レストラン・農作物生産者・生活者などあらゆる方々と共に、食をとりまく循環を目指す NIKKO は、常に先の未来を見据えています。自宅に迎えたあとも清々しい気持ちで使い続けられる、そんな環境にもやさしい純白の洋食器は、これからも様々な場所で愛されていくのでしょう。