「無垢材」と「集成材」は何がちがうのか、「無垢材」と「突板」の家具はどちらがいいのか。最近よく耳にする「プライウッド」とはどういうものなのか。
木材の加工の仕方はさまざまで、木材の特徴に合わせて、もしくはデザインや用途に合わせて加工法が選択されます。
それぞれ一長一短あり、一概にどの製材・加工法がいいとは言えません。選ぶ際には、ご自身の用途や環境に合わせて考えてみるといいですね。
KANADEMONO 「木材の専門用語ナレッジ vol.1」では、KANADEMONO のプロダクトに使用されている素材について簡単に紹介をしています。
製材について
天然木を製材して作られる木材の中でも、加工方法により呼び方が変わります。
一本の木から切り出された継ぎ目のない木材は「無垢材」、複数の木片を貼り合わせて作成する木材は、接着方法によって「集成材」と「幅はぎ材」に分類されます。
それぞれに異なった特徴があり、用途や好みにより使い分けられています。
※ KANADEMONO では、無垢の木材を使用した天板はすべて「無垢材」として扱っており、幅はぎ材の商品についても「無垢材」と表記しています。
無垢材
丸太から直接切り出した一枚板のことを、無垢材といいます。
自然の中で育った天然木をそのまま使用し、丁寧に乾燥・製材した一枚板は、たいへん貴重で価値の高いもの。木本来のぬくもりや素材感を味わえるのが特徴です。
ひとつひとつ異なる木目や節模様、経年変化による表情の変化を存分に愉しめるのも無垢材の醍醐味です。
また、自然素材である木材は、常に呼吸をして生きているため、外部の湿度や乾燥に影響を受けやすいのも特徴。伸縮活動により、反りや割れの可能性があることを心しておくことも大切です。
二つとして同じものがないオリジナリティ、そして手間がかかる分、愛着をもって使い続けることができるのも無垢材の魅力ともいえるかもしれません。
無垢材の特徴
- 天然木本来の風合いや質感、温かみを味わえる
- 美しい木目や豊かな節、経年変化を愉しめる
- 二つとして同じものがないオリジナリティ
- 木の表情をそのまま残すため、表面には凹凸がある場合もある
- 部屋の中の水分を吸水・拡散する湿度調節の効果
- 温度や湿度の影響で伸び縮みするため、反りや割れの可能性あり
- 存在感や重厚感があり、テーブル天板など大型家具に適している
- 木の種類や育った環境等により強度にはバラつきあり
KANADEMONO の無垢 杉材を使用した天板は、天然木の風合いが人気。まるで一枚板のように見える自然な接ぎ方は職人技によるもの。
表情豊かな節、時が経つにつれて増す味わいが魅力。醸し出される無垢材ならではの温かみは、人をほっとさせます。
集成材
集成材とは、ブロック状にカットした木材を、接着剤を使用してフィンガージョイント(※1)で接合したものです。
柾目、板目(※2)方向に関係なく、繊維が異なった方向で木片が接着されているため、木材のもつ収縮や膨張をある程度抑えるようつくられています。
乾燥や湿気の影響を受けにくいので、反りや割れの心配が少なく、扱いやすい木材といえるでしょう。
集成材は日本農林規格(JAS)により規格が定められており、強度等、品質の安定性が見込めるため、住居の骨組みから家具まで、幅広い用途で使用されています。
※2 柾目(まさめ)・板目(いため)とは、丸太から板に加工する際の製材方法による木目の出方の違いのことをいいます。
年輪に対しのこぎりを垂直方向に入れ、丸太のちょうど真ん中あたりを切り出すと「柾目」という縦じま模様の木目に。水平方向に入れ、丸太の中心からずれた部分を切り出すと「板目」というタケノコの断面のような木目が現れます。
集成材の特徴
- 天然木を使用しているので、木の温もりを味わえる
- 環境変化による影響が少なく、反りや割れが生じにくい
- 強度や品質が安定しやすい
- 一枚板の自然な節模様とは異なるものの、木目の美しい箇所を揃えた板を製作可能
- 機能的で幅広い製品に使用できる
- ブロック状の木材を接ぎ合わせているため、無垢板のような存在感や風合い、全体的な木目の雰囲気を味わうことができない
※ 木材の接ぎ合わせに使用している接着剤につきまして、KANADEMONO では、ホルムアルデヒド等の含有率の安全基準を厳しく管理しています。
穏やかな木目とナチュラルな温かみで人気の、KANADEMONO のラバーウッド集成材を使用したテーブル天板。
集成材は乾燥や湿気などの影響を受けにくいため、反りや割れ、ねじれなどの心配が少ないのも大きなポイントです。
幅はぎ材
集成材がブロック状に木片をつなぎ合わせているのに対し、木材と木材を横方向のみ張り合わせて作る板材のことを、幅はぎ材といいます。
集成材よりも大きな材を使用し、接合部分も少ないため、より自然な仕上がりになります。
一枚板はたいへん貴重で高価になりやすいですが、幅はぎ材は天然木を効率よく活用し製作できる木材。無垢材の良さを活かしながら、反りなどのデメリットも改善できます。
KANADEMONO の多くの木材天板は、こちらの「幅はぎ材」を採用しています。
幅はぎ材の特徴
- 集成材よりも大きな板材を接いで作るため、より自然な木目や経年変化を愉しめる
- 高度な接ぎの技術により、無垢板のような風合いを再現
- 環境変化による影響が少なく、反りや割れが比較的生じにくい
- 高価な木材も効率よく活用して製作ができるため、リーズナブルに提供できる
- 一枚板の自然な節模様とは異なるものの、木目の美しい箇所を揃えた板を製作可能
表情豊かで美しい木目が魅力のホワイトオーク。しっかりと厚みのある幅はぎ材を使用し、天然木ならではの温もりを存分に感じられる仕上がりに。
”墨流し”と呼ばれる滑らかで美しい木目が特徴のウォルナット。木目の表情や色合いが豊かで、不規則な濃淡の縞が美しく現れます。
化粧材について
無垢材とは異なり、芯材には合板など別素材を使用し、表の見える部分だけに薄くした木材を貼って化粧をした建材もあります。
天然木からつくられる化粧材には「突板( つきいた)」と「挽板(ひきいた)」の2種類があり、それぞれ木本来の木目を表現することが可能。
チェアの背もたれや棚など、軽量素材を用いながら木目の美しさを活かした家具づくりに使用されます。
このほか、木目をプリントしたシートを張った安価な建材もあります。
突板
突板(つきいた)とは、木を薄くシート状にスライスした表面化粧材のこと。
厚さ0.2mm〜0.6mm程度のシート状の板を芯材(合板やMDFなど)に貼り付け、木肌の表面に仕立てます。芯材に貼ったものは「天然木化粧合板」などとよばれます。
天然木の美しい木目を活かして複数板の生産が可能なほか、薄くスライスすることで水分含有量を均一にでき、品質を保てるといった利点があります。
また、1本の木から大量の突板を生産できるため、環境にやさしいサスティナブルな素材とも近年いわれています。
貴重な高級木材の場合は特に有効な加工法のため、古くから、海外のアンティーク家具に多く使われています。
突板の特徴
- 天然木の木目や節を活かした、美しい仕上がり
- 温度や湿度による変形がほとんどない
- 家具の軽量化と、デザイン性の確保が両立できる
- 1本の木から大量の突板を生産できるため、環境にやさしいサスティナブルな素材
- 経年変化による味わいはほとんど生まれず、木本来のぬくもりは劣る
- キズついた場合、芯材が見えてしまう場合がある。修復は難しい
突板をつかったプロダクト
オーク + パイン材 ナチュラル スタンドミラー
木目の美しいオーク突板を木枠に使用したミラー。パイン材の縁をつけることで、立体感を表現しています。
Natural-Industrial ダイニングチェア アイアン脚
こちらのチェアは、背もたれにオークの突板を使用。天然木の木目を活かした、美しい仕上がりになります。
Natural - Chic 3 pins Side Table
表情豊かなウォルナットの突板を使用したサイドテーブル。美しく艶のあるダークブラウンの木肌は、高級感があります。
THE TABLE / ホワイトオーク × Black Steel
生き生きとした木目の表現にこだわった、KANADEMONOの天然木スタンダードシリーズ。熟練の職人が1枚1枚丁寧に仕上げています。
挽板
挽板(ひきいた)とは、突板とは異なり、鋸で切り出した厚みのある板のこと。
突板と同じく芯材の表面に張って使用しますが、最低でも2mm程度の厚みがあるため、無垢材により近い風合いを表現することができます。挽板の厚みは、2mm〜20mm とさまざまです。
木材を有効に使い、木本来の良さを活かして、フローリング製作によく使用されています。
挽板の特徴
- 天然木の木目や節を活かした、美しい仕上がり
- 無垢材に近い温もりや経年変化をやや感じることができる
- 環境変化の影響を受けにくく、反りに強い
- 厚みがあるため、突板と比べると多少のキズや凹みでは破損しない
合板・繊維板について
木を加工して作られる建材には、大きく分けて「合板」と「繊維板」の2種類があります。
いずれも表面に突板や挽板といった化粧材を張り、芯材として利用される場合が多いですが、それぞれに異なった性質があります。
合板は、1~4mm程度にスライスした木を重ねて成形したもの。家具製作に使用される代表的なものに、極薄の板を層状に重ねた積層合板(プライウッド)があります。
一方、木をチップ状に砕いて固めて成形したものは繊維板(ファイバーボード)とよばれ、木材チップの大きさによりMDFとパーティクルボードに分かれます。
プライウッド
1mm〜4mm程度にスライスした単板を重ねて接着し、層状に成型したものをプライウッド(積層合板・合板)といいます。
木目が直角となるよう交互に重ね、熱圧を加えて貼り合わせることで、頑丈で反りにも強い仕上がりになります。
化粧合板とするほか、下地材としてや素地のまま化粧板としても使用するなど汎用性の高い材料です。
熱圧による加工で滑らかな曲線ラインを表現できるのが特徴で、曲面に成形加工したものは「成形合板」と呼ばれています。
1930年代、フィンランドの建築家/デザイナーであるアルヴァ・アアルトが「L leg」とよばれる曲木の技術を開発。この技術をつかったプライウッドスツールなどのプロダクトの誕生をきっかけに家具の可能性が大きく広がります。
そして、1940年代、アメリカでチャールズ&レイ・イームズにより、この曲げ加工の可能性を最大限に活かした三次元成形の「イームズ・プライウッドチェア」が誕生。プライウッドでつくられた、洗練されたデザインのチェアが世界に広がりました。
それ以降、数々の家具デザイナーがプライウッドの自在さを活かして、優れたデザインと実用性を兼ね備えた多くの家具を生み出します。デンマークのアルネ・ヤコブセンのセブンチェア、ジャン・プルーヴェのスタンダードチェア、柳宗理のバタフライスツールは特に有名です。
プライウッドの特徴
- 加工性が高く、デザイン性の高いチェア等の製作に適している
- 温度や湿度による変形がほとんどない
- 軽量かつ強度がある
- あえて層を見せるプライウッドもあるなど、スタイリッシュな印象
- 経年変化はほとんど見られず、木本来の温もりとは異なる
- キズついた場合の修復が難しい
Wooden Curve 曲げ木 プライウッド チェア
アートのオブジェのような曲線が美しいチェア。プライウッドだからこそ表現できる滑らかな曲面は、さまざまなデザインを可能にします。
Art-Wood ダイニングチェア アイアン脚
木目が美しいアッシュのプライウッドの座面が滑らかなカーブを描いて、座り心地を快適にしています。
Stylish - Modern Silver gray デスクチェア
スエード調の生地とプライウッドの組み合わせがモダンな雰囲気。厚み 10mm のプライウッドを使用し、優れた強度や耐久性を実現しています。
Plywood × ミニマル サイドボード ブラック
こちらのサイドボードは、ウォルナットやローズウッドといった様々な樹種をきれいに積層することで、独自の表情を作り出しました。
MDF
MDF(medium-density fiberboard)とは、細かくほぐした木の繊維に接着剤を配合し、ボード状に固めたもの。中密度繊維板(0.35〜0.8g/㎠)とよばれる、ファイバーボードのひとつです。
表面は滑らかで均質に生産ができ、軽量かつ厚みを出せるのが特徴。
素地のほか、樹脂シートや突板などで化粧してつかわれることが多い素材です。加工性が高く曲面にも使用できるため、住宅建材から収納家具の生産まで、非常に幅広く利用されています。
ファイバーボードは、密度によって大きく3つに区分されており、ほかに軟質繊維板(インシュレーションボード:0.35g/㎠未満)と、硬質繊維板(ハードボード:0.8g/㎠以上)があります。
MDFの特徴
- 軽量で加工しやすく、また安価なためDIYにも利用しやすい
- 反りやひび割れがおこりにくい
- 細かい繊維でできているので、表面や切断面が滑らか
- 材料が均一になるため、品質が安定しやすい
- 耐水性が弱く、表面加工をしっかりと行わない場合カビ発生の恐れもある
- 強度は弱め
細かい繊維を固めて作られたMDFは、軽量さが特徴。手軽に加工ができるため、DIYにもよく使われています。
高機能のナノテクノロジー素材 FENIX を採用したby KANADEMONO のテーブル天板は、芯材にMDFを使用しています。
パーティクルボード
パーティクルボードとは、細かくした木材の小片(パーティクル)を乾燥させてから接着剤を配合し、高温でプレスしたボードのことをいいます。
MDFと同じく廃材などを再成型してつくられる芯材ですが、繊維レベルまで細かくするMDFに対し、こちらは砕いた木片を使用。中心部は密度が低く、表面は密度が高い状態になります。
曲げに強く、家具をはじめ壁や屋根の下地材など、建築の構造材にも用いられています。
パーティクルボードの一種として、比較的大きな短冊状の削片を使用し、ある程度向きを揃えて成型したボードは別途「OSB(Oriented Strand Board)」とよばれます。もとは構造材として使用されてきたものですが、特徴的な表情をあえて意匠的に見せたデザインの壁なども見られるようになりました。
建築の解体材やパレットの廃材、間伐材、製材工場の廃材などをリサイクルしてつくられるため、非常にエコ&サスティナブルな素材だといえます。
パーティクルボードの特徴
- 幅や厚みを自由につくり出すことができる
- 繊維方向がないので、反りやひび割れがおこりにくい
- 間伐材や廃材をリサイクルして製作するため、資源の有効活用に役立つ
- 遮音性や断熱性に優れている
- 湿気を含むと膨張しやすく、強度が弱くなる
- 切断面が粗く、釘やネジを保持しにくい
OSB(Oriented Strand Board)の表面には、砕いたチップが集まっている様子が見てわかります。
MDF(上)とパーティクルボード(下)の断面。密度があり小口が滑らかなMDFに対し、粗く砕かれた木片が見えるのが特徴です。